利回りだけを見て失敗した不動産投資事例

利回りだけを見て失敗した不動産投資事例

投資物件を選ぶときに、まず「利回り」に目がいくという人も少なくないと思います。しかし「利回り」と一言でいってもその内実は様々であり、多くの広告に記載されている「表面利回り」通りに運用できることは実に稀です。本記事では、「利回り」の意味とその正しい捉え方をご説明します。

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実は一つではない利回りの種類

不動産投資を行うときに、利回り表記が気になる方は多いでしょう。たしかに利回りからその投資によって得られる収益を把握することは可能です。しかし、利回りにもいくつかの種類があり、物件紹介に併記されている利回りは一つの参考に過ぎません。ここでは、利回りの種類について説明します。

表面利回り

表面利回りは、以下の式で求められます。

(年間家賃収入)÷(不動産価格)×100(%)

つまり、投資額に対して年間でどれくらいの家賃収益を得られるのかを表した指標です。エリアごとに相場は違いますが、都内の新築ワンルームマンションであれば、3~4%くらいが相場でしょう。通常、物件情報に併記されている利回りは表面利回りを意味します。

実質利回り

表面利回りに経費などを考慮した現実的な値に実質利回りというものがあります。実質利回りは以下の式で求められます。

(年間家賃収入-諸経費-空室損益)÷(不動産価格-購入時諸費用)×100(%)

実質利回りは家賃収入から経費などを差し引くため、実際に手元に残る年間収益の不動産価格に対する比率を表しています。そのため、より正確な収益計算をしたい場合は実質利回りを用いることになります。

キャップレート

キャップレートとは、キャピタライゼーション レート(capitalization rate)の省略語であり、還元利回りとも呼ばれる利回りの一種です。キャップレートは、他の利回りとは明らかに異なる概念です。というのも、物件価格や想定家賃収入などから算出される値ではなく、むしろ物件の価値を評価する際に用いられる計算上の概念だからです。その計算式自体は単純で、次の計算式が知られています。

(年間純収益)÷(キャップレート)=(不動産価値)

不動産投資におけるキャップレートはエリアごとに異なる値になります。たとえば東京23区内では4.1〜4.3%と言われています。

また、上の計算式を変換すれば、実質利回りと同じ式に変換することができます。それゆえ、計算式だけを見れば実質利回りと同じものと誤解してしまいますが、実際にはそうではありません。実質利回りは家賃と物件価格から算出される値ですが、キャップレートはエリアと物件の性質から定められ、物件価値を決定する際に利用される値です。より単純化して言えば、キャプレートから物件価値が決まり、決まった物件価格から実質利回りが算出されます。

キャップレートは物件価値を左右する概念です。たとえば都内のマンションと地方のアパートでは同じ間取りの物件であっても不動産価値が異なります。その差を生み出すための計算上の装置のひとつがキャップレートなのです。エリアの需要やリスクに応じてキャップレートは変動し、物件価値が変動しています。

そうした性質から、キャップレートは表面利回りや実質利回りのように目にする機会はほとんどありません。しかし、投資価格の適切さをはかるにはとても相性が良い数値であるため、よく学んでおくことをお勧めします。

表面利回りの落とし穴

投資用物件には利回りが表示されており、投資家はそれに基づいて投資計画を立てます。確かに利回りは投資計画の設計に役立ちますが、多くの場合、利回りとして表示されているのが表面利回りであることに注意しなければなりません。投資計画を立てて投資判断をする際、表面利回りは現実的な指標ではありません。実質利回り、キャップレートを参照しつつ、表面利回りに投資計画を依存することの危険性を紹介します。

不動産投資にかかるコストの見落とし

表面利回りが計算に実用的でないのは、不動産経営をする際にかかるコストを無視してしまうためです。不動産投資をする際にかかるコストは、初期費用のほかにランニングコストや、ローンを組んでいた場合はローンの返済費用などがあります。

実質利回りで計算する場合には利益から除外されるこれらのコストですが、表面利回りだけで考慮した場合には計画時点で利益に加算されてしまいます。15年で投資資金の回収ができるなどと甘く見積もっていたら、実際には30年もかかってしまうかもしれません。よりひどい場合には、空室による損失を考慮していなかったばかりにローンの返済が立ち行かなくなるという事態も考えられます。

不動産投資の失敗で最も恐ろしいのはローンの返済が滞り、破産に陥ることです。必ず実質利回りに基づいてローンの返済計画を立てる必要があります。経費や空室によって破産に陥ることがないように注意しましょう。

関連記事:不動産投資ローンとは?具体例や金融機関の選び方、融資審査に通るコツを解説!

高すぎる利回りは高リスクの証拠

投資計画を立てる際に目安の一つとなる利回りですが、不動産会社が設定した利回り額が相場より明らかに高く設定されている場合は、投資リスクが大きい場合があります。先ほどキャップレートの概念を紹介しましたが、その値がリスクを反映していると考えれば、その理由も明らかです。

不動産価格はキャップレ―トを用いて概算されます。通常キャップレートはエリアの評価を反映しているため、大きくエリアの相場と乖離することはあり得ません。しかし実際の物件の中には明らかに割安で表面利回りが高く設定された物件も存在します。こうした物件はエリアの標準的なキャップレートよりも高いキャップレートで物件価値が見積もられていると言えます。

都内と地方の比較に見るリスクと利回り

利回りの違いによるリスクの差は地方と都市部の利回りの違いに見て取ることができます。一般に都市部の駅前の物件は空室が生じる可能性は比較的低く、家賃の値崩れも起きにくいことから、投資計画が乱されにくい物件として知られています。一方、地方の物件は立地にもよりますが、都市部に比べれば空室リスクを抱えていると言われます。

両者の平均的な利回りを参照してみると、その差は明らかです。東京都内山手線沿線の区分マンションの平均利回りはおよそ6%です(2018年1月健美家調べ)。一方、同じ時期に調査された全国区での利回り調査を見てみると、静岡県浜松市で20.37%、福岡県北九州市でも15.11%、東京都に近い千葉市であっても11.46%など、明らかに都内より高い利回りで物件が販売されています(2018年1月健美家調べ)。

ただし、ここで示したのはエリア間の平均的な利回りの多寡にすぎません。エリア間の比較よりも、同じエリアの中で明らかな表面利回りの違いがある場合には、特に注意が必要です。表面利回りは物件の投資金額回収率を示すと同時に、リスクの高さを示していることを忘れないようにしましょう。

キャップレートの重要性

さて、改めてキャップレートについて詳しい知識を身につけましょう。表面利回りや実質利回りに比べると複雑な概念ですが、プロ投資家の多くはキャップレートの性質を理解して投資を行っています。

キャップレートを用いた投資判断を行うためには、三つのことを理解しましょう。キャップレートがリスクを反映していることと、キャップレートがエリアの性質を示していること、そして適正なキャップレートはわからないという三点です。

キャップレートはリスクを反映してい

キャップレートとは、「リスクフリーレート+リスクプレミアム」と一般に解釈されています。

リスクフリーレートとは、リスクがない、または、考えなくてもよいほど少ない投資を行った際の利回りを表しています。リスクフリーレートとして用いられる代表例としては国債金利があり、不動産投資においてもこれは適応可能です。

一方でリスクプレミアムとは、リスクのある投資をする際に、そのリスクの分だけ高く設定される利回りのことを指します。不動産投資にはリスクがつきものです。そのリスクある投資の利回りが国債と同程度であれば、投資を行う人はいません。不動産投資に含まれるリスクの分だけ高い利回りがあってはじめて、投資が成立します。このとき追加される利回りがリスクプレミアムにあたります。

したがって、キャップレートとは不動産投資の専門用語ではなく、投資全般で広く使える指標です。不動産投資に用いる場合は、不動産投資のリスクプレミアムを加算し、他の投資ではそれぞれのリスクプレミアムを加算します。つまりはその投資のリスクの程度を表している指標なのです。

キャップレートはエリアの性質を示している

実際にキャップレートを参考に投資判断をするためには、不動産投資一般のリスクとは別に、エリアのリスクプレミアムを考えなければなりません。

キャップレートが不動産価値の算出に用いられていることはすでに紹介しました。ここでエリア別に概ね定まっている家賃相場とキャップレートを用いて物件価値を実際に判断してみましょう。渋谷区のワンルームの家賃相場は10万円です。渋谷区のキャップレートは4.2%前後と言われています。諸経費・空室損として15%を見込むとき、物件価値を算定してみます。

(10万円 × 85% × 12ヶ月) ÷ 4.2% = 2,428万円

この物件価格から表面利回りを計算すると、4.9%になります。

この計算で用いたキャップレートはデータバンクが発表した参考値です。キャップレートはいくつかのデータバンクが示している参考値しか存在せず、その数値は数ヶ月から1年程度遅れて発表されます。

キャップレートを参考にして投資判断をするとき、その値がエリアによって異なることは押さえておきましょう。また、エリア別の参照値を知ることはたしかに重要ですが、あくまでそれが参考値にすぎないことも同時に頭に留めておきましょう。

正確なキャップレートは存在しない

キャップレートが反映しているリスクは他にもあります。不動産投資のリスクとエリアごとのリスクの他に、物件ひとつひとつのリスクも当然反映されることになります。物件価格の微妙な変動はキャップレート評価のブレにこそ由来しているのです。

キャップレートを用いた投資判断の一つの方法として、自ら参考値を算出する方法が知られています。投資予定の物件とエリア・間取り・築年数などが似通った物件について、実質利回りを計算して平均することで、擬似的なキャップレートとする方法です。実際、この方法で平均的な評価と比較することで、その物件が抱えているリスクが浮き彫りになる可能性もあります。

しかし、リスクの評価はあくまで主観的なものであることには注意が必要です。売主や不動産仲介業者がリスクの高い物件と評価し、割高なキャップレートを用いていたとしても、実際にその物件がキャップレート相応のリスクを抱えているかはわかりません。逆にリスクの少ない物件として低いキャップレートが用いられていても、実際にリスクが低いとも限りません。4.4%と4.6%のどちらが正確かという判断は、誰にもつけることができないのです。

したがって、キャップレートを用いて投資判断をする場合には、エリアの参考値と類似物件から求められる参考値を前提に、その物件のキャップレート設定が適切か否かを考えるようにしましょう。具体的な数値として検討するところまでいかずとも、キャップレートのメカニズムを理解して、リスクと物件価格の評価を行う視座を持つことで、投資判断はより慎重で洗練されたものに変化します。

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表面利回りだけを見てしまった失敗例

以上に示してきた表面利回りと実質利回り、そしてキャップレートを前提にすれば、表面利回りだけで投資判断をするのはあまりに危険だとわかります。最後にそれぞれの概念を用いて表面利回りだけを見た場合に発生する投資の失敗を回避してみましょう。

次の物件について投資を検討してみます。

  • エリア:東京都渋谷区
  • 物件:中古・ワンルーム・築15年
  • 価格:2,200万円
  • 家賃:14万円
  • 利回り:7.7%
  • 自己資金:100万円(ローン金利2%、15年)

表面利回りの注意点はコストとリスク

都内の物件で利回り7.7%は高水準と言えます。しかしまずは実質利回りを計算して冷静に考えてみましょう。ここで諸経費として家賃の15%を計上し、さらに空室率を5%と見積もって実質利回りを試算します。

(14万円 × 12ヶ月 × 0.80)÷ 2,200万円 × 100% = 6.1%

実質利回りは6.1%です。これでもかなりの高利回りを誇っています。しかしローンの返済計画は見直しを迫られそうです。ローンの返済を概算すると、次のようになります。

2,100万円を15年、金利2%で借りた場合

月当たり返済額:135,137円

家賃収入は14万円なので黒字に見えますが、実質利回りに基づけば実収入は11万円ほどしかなく、赤字が確定してしまいます。こうした事態を事前に察知すれば、ローンの借入期間を伸ばして月当たりの返済額を減らすか、自己資金を多く投入して返済額を減らすことで対応可能です。

ここでは中古物件ということもあり長期ローンを避ける考えから、自己資金を500万円追加してみましょう。

1,600万円を15年、金利2%で借りた場合

月当たり返済額:102,962円

これなら実質利回りに基づいても毎月1万円弱の黒字が続きそうです。

キャップレートから物件評価を考える

最後にキャップレートを評価してみましょう。どうやらこの物件のキャップレートは6.1%という高水準で計算されていたようです。エリアの標準的なキャップレートは4.2%なので、かなりの高水準と見なされています。たしかに中古物件で築15年ということもあり、5%弱のキャップレートは適正と考えられますが、それにしても高すぎます。

このことに違和感を抱いたら、調査を行いましょう。駅からの距離や付近の開発状況、物件固有の性質を細かく評価していきます。細かく評価を続ければ、必ずその原因を見つけることができるでしょう。

この例では、次のような悪条件が重なっていたとしましょう。駅からの距離が遠く、不人気な間取りをしていて、近隣に新しいマンションが建って日当たりが悪くなりました。これらの理由から長期的なリスクが高く評価され、6.1%という高いキャップレートが用いられていたようです。

さて、ここからは投資家としてのあなたの判断が求められます。このリスクを小さいと評価して投資に踏み切るか、それともこのリスクをより重大なリスクと判断し投資を見送るかは、投資家の判断によるのです。この際重要なのは、リスクを他の物件と比較するのではなく、用いられているキャップレートと比較することです。もし6.1%ものキャップレートを用いるほどのリスクではないと判断するなら、この物件は割安物件と言えるのです。

利回りと言っても悪くなる原因は様々です。そうした失敗の原因を詳細にまとめた記事も合わせてご覧ください。
参考記事:【総まとめ】典型的な不動産投資の失敗パターン|回避法と4つの教訓

まとめ

不動産投資をする際に注意すべきポイントとして表面利回りと実質利回りがあり、表面利回りのみを活用することの危険性について説明しました。さらにより良い不動産投資をするために、キャップレートを用いる方法も紹介しました。キャップレートは投資のリスクを考えられるため、プロも使用する実用的な指標です。より慎重な投資判断を行うためにも、キャップレートを活用してみてはいかがでしょうか。


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