【専門家監修】不動産投資の確定申告、青色申告と白色申告の違いって?  

確定申告

年に一度行う確定申告ですが、不動産投資をしている場合、少しの手間をかけるだけで節税できるかもしれません。
そのためのキーワードは、「青色申告」です。
今回の記事では青色申告と白色申告の違いについてお話していきます。確定申告で節税するために必要なことを学んでおきましょう。

青色申告・白色申告とは?

確定申告とは、1年間の所得の金額とそれに基づいて算出される所得税の額を計算し、税金の源泉徴収分や予定納税分の過不足を清算する手続きです。
確定申告には二種類の方法があり、一つが青色申告、もう一方が白色申告と言われます。

そうはいっても、白色申告とは一般的な確定申告の形式のことにすぎません。
特に白色申告制度というものがあるわけではなく、青色申告と区別するための表現として用いられています。つまり、青色申告でない普通の確定申告を白色申告と呼び分けているのです。

では、青色申告は普通の確定申告となにが違うのでしょうか。
青色申告では、日々の取引の状況を細かく記帳し、その記帳に基づいて正確な申告をすることと引き換えに、所得金額の計算などで税制上の優遇を受けられるという申告制度です。
しかし、この優遇措置は誰しもが受けられるというものではありません。まずは青色申告のために必要な条件を具体的に見ていきましょう。

青色申告に必要な条件

青色申告制度を利用するためには、以下の条件に当てはまる必要があります。

  • 不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかがある人
  • 決められた期日までに事前に青色申告することを申請する「青色申告申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すること。(原則的には青色申告するつもりの年の3月15日までです。)

ここで注目すべき点は、不動産所得さえあれば1つ目の条件を満たせるということです。つまり、不動産投資をしている方であれば誰でも青色申告制度を利用できます。

ただし、注意していただきたいのは、あくまでもこれは青色申告制度を利用する最低条件であるということです。この条件を満たしたうえで、青色申告制度に則った帳簿づけをしなければ、青色申告を活用することはできません。

青色申告のメリットとは?

さて、青色申告によって受けられる優遇措置とはどれほどのものなのでしょうか。青色申告による優遇措置としては、事業所得に限定されたものが目に付きますが、不動産所得を対象とした優遇措置も用意されています。
不動産投資をする方にとっての主なメリットは「青色申告特別控除」「青色申告事業専従者給与」の2つに絞られます。
ここではその二つの制度を紹介します。

青色申告特別控除

不動産投資をする方にとって青色申告の最大のメリットは青色申告特別控除にあります。不動産投資の規模によって控除額が変わってしまう点に注意が必要ですが、それでも最大のメリットであることに変わりはありません。

この制度では、最高65万円を所得金額の計算の際に控除することができます。
所得税は所得額から計算されるため、所得が最大で65万円控除されれば、それだけ税額も小さくなるのです。
ただし満額65万円の控除を受けるためには、さらに条件があります。不動産の運営が「事業的規模」であり、かつこの不動産経営にまつわる取引を「発生主義」に基づいた「正規の簿記」で記帳し、これに基づく「貸借対照表」「損益計算書」とともに提出することが条件となります。

聞きなれない言葉が続きました。
「事業的規模」と「正規の簿記」、「発生主義」、そして「貸借対照表」と「損益計算書」はそれぞれなにを意味するのでしょうか。
まずは不動産運営の「事業的規模」の具体的な大きさを確認し、そのあと「現金主義」と「発生主義」の違いを整理します。「正規の簿記」および「貸借対照表」「損益計算書」については記事の後半、『青色申告のデメリットって?』の章で説明しますので、そちらをご参照ください。

「事業的規模」とは

実は「事業的規模」には明確な基準は定められていません。ただ、判断のおおまかな目安があることは知られています。たとえばアパート経営の場合、10部屋以上の賃貸用の部屋が設けられていれば「事業的規模」と認められるようです。あるいは一軒家を貸し出す場合、5棟以上設けられていれば原則として「事業的規模」と認められるようです。

なお、以上の目安を満たさない方であっても、10万円を所得金額から控除して計算できることが定められており、青色申告特別控除の利点は残ります。

「現金主義」と「発生主義」の違い

「現金主義」と「発生主義」は、それぞれ帳簿上でお金の出入りを計上するタイミングの違いを表す用語です。「現金主義」とは現金のやり取りが生じたタイミングで計上する方式です。したがって、収益は現金が入金されたタイミングで、費用は現金が支払われたタイミングで帳簿に計上します。これに対して「発生主義」とは、実際の現金のやり取りに関わらず、支出や収入が発生した事実で計上する方式です。

会計処理のタイミングの違いは、次のような記録上の違いを生み出します。

・「現金主義」は一つの取引について、記帳が一回で済む分手間が少ない。
・「発生主義」は取引の発生時期、実際の現金のやりとり、減価償却等と細かい情報が記録される。

青色申告事業専従者給与

この制度は青色申告制度を利用する方から、生計を一にしている親族に対して支払われる給与を必要経費に算入できるというものです。しかし、この制度の利用条件は以下のように定められているのでご注意ください。

・6か月以上もしくは事業に従事できる期間の2分の1以上の間、受給者が青色申告制度利用者の事業に「もっぱら」従事していること
・不動産経営が「事業的規模」であること
・「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署に提出すること

ここでいう「もっぱら」とは、それを主な業務としていることを意味します。もっぱら従事していると認められない例は大きく3種類あります。
まず学生である場合、学業が主とみなされます。
このとき夜間学校や定時制など、修学形態によっては例外が認められます。また、当然他の職業をもっていれば、そちらが主とみなされ、不動産事業は副とみなされることがあります。
この判断基準は主に業務時間で、他の職業への従事時間が少ない場合には不動産事業にもっぱら従事していると認められます。最後に、老衰や病気、障害によって不動産事業に従事できない場合も除外されます。

青色申告のデメリットって?

青色申告制度を利用する際に発生するデメリットは、ただ「手間」が増えることしかありません。

白色申告に比べて、「青色申告申請書」の事前の届け出や、「正規の簿記」による記帳、必要書類の保管、受けられる優遇措置に必要な諸条件の確認等と手間がかかります。しかし、この手間以外に特にデメリットはありません。

ここでは「正規の簿記」と「必要書類の保管」について、さらには「記帳」について不安が残る方への簡単なアドバイスをまとめてみました。

「正規の簿記」とは

簿記とはそもそも、日々の経営活動を記録・計算・整理して、その企業の経営成績や営業状態を明らかにするものです。そして確定申告ではこれに基づいて課税額を決定します。

それでは、「正規の簿記」とは一体どういうものなのでしょうか。
「正規の簿記」という表現は、「企業会計原則」という会計基準の中で掲げられた原則を指します。すなわち、「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない 」との原則に基づきます。

この原則に基づいた記帳方法として、一般に「複式簿記」が知られています。したがって、青色申告でも複式簿記が採用されますが、それ以外にも「正規の簿記」と認められる方法があります。すなわち、簡易帳簿に加えて、簡易帳簿では不足してしまう債権や債務等についての情報を補う「債権債務等記入帳」等を備え付ける方法でも、「正規の簿記」と認められます。

二つの方式について、具体的には以下のように帳簿を用意しなくてはなりません。

複式簿記 主要簿 仕訳帳、総勘定元帳
補助簿 補助記入帳 現金出納帳、当座預金出納帳、小口現金、出納帳、売上帳、仕入帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳
補助元帳 商品有高帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳
簡易帳簿 最高控除額10万円 現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳
最高控除額65万円 (上記5種類の帳簿に加えて)預金出納帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、特定取引仕訳帳、特定勘定元帳

 

貸借対照表と損益計算書

簿記が取引の記録だとすれば、貸借対照表は資本と負債の記録にあたります。不動産事業に限らず、事業の資本は様々な姿で保存されています。現金、建物、備品などの資本の容態とともにその額を記載しつう、借入金などを記載して、この合計が事業資産と等しくなることを確認します。

一方損益計算所は事業の純利益を記録するものです。
いかなる事業にも費用がかかります。得られた収益を費用と並べて記載することで、事業を通じてどれほどの純利益が生じたのかを明示的に記録することができます。

いずれも作成方法はそう複雑ではありません。
正規の簿記さえ用意することができれば、それに基づいて作成することができます。
各種の勘定の残高を転記して試算表を作ることができれば、その一部を貸借対照表に、残りを損益計算書に転記することで記録は完了します。この点で、青色申告で最も手間取るのはやはり「正規の簿記」を用意する段階だということができます。

必要書類の保管

日々の取引についての書類は保管する義務があり、これについては白色申告と青色申告のどちらにも共通しています。ただし、青色申告の場合は白色申告に比べて保管しなくてはならない書類の種類が多く、また、その期間も長くなっているので注意が必要です。具体的には以下の通りになります。

保管する書類 保管年数
青色申告 帳簿 現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳、仕訳帳、総勘定元帳など 7年
書類 決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など 7年
現金預金取引等関係書類 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など 7年※
その他書類 請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など 5年
白色申告 帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿 7年
業務に関して作成した上記以外の帳簿 5年
書類 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 5年
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 5年

※前々年分所得が300万円以下の場合5年

「簿記」の記帳について

読者の方々の中には不動産投資で初めて確定申告をするという方もいるかと思います。
そんな方にとって「簿記」はなじみが薄く不安に思う方もいることでしょう。ここではそんな不安を解消するアドバイスを用意しておきました。

  • 税理士に相談する。

確定申告は支払う税金を確定させる手続きです。税の事は税のプロに訊くのがもっとも確かで容易な方法です。税務署は記帳の仕方を無料で税理士の方に指導してもらえる機会を設けているので是非お近くの税務署に問い合わせてみてください。

また、確定申告の業務を依頼してしまえば手間も大幅に削減できます。ただし、これは税理士の方に依頼するための料金が発生しますので、最大限に青色申告の恩恵を受けたいという方にはあまり向いていないかもしれません。

  • 会計ソフトを利用する

会計ソフトを利用すれば日々の取引を入力すると自動で記帳してくれます。取引が特に多い場合は重宝しますが、こちらも有料となりますのでお気をつけください。
また、こちらも税務署は会計ソフトの体験版を利用して記帳を指導する機会を設けています。使い方の不安な方はご利用ください。

  • 日商簿記検定を勉強する。

日商簿記検定とは商工会議所が主催する簿記に関する検定で、合格すると資格を得ることができます。
3級から1級まで難易度別になっていますが、簿記3級でしたら市販のテキストで十分対応可能な内容となっています。また、3級程度の知識でも「複式簿記」の仕組みについて理解するのには十分ですので、この機会に資格の一つとして取得してみると簿記に対する不安が解消されるかもしれません。

以上のようにアドバイスを挙げてはみましたが、中には自力で帳簿のつけ方を調べながらという方もいるようです。
1度青色申告制度を利用してしまえば、毎年同じことの繰り返しという面もあるので、あまり身構える必要もありません。

また、取引記録が煩雑にならない経営規模であれば、その分手間も小さくなります。
規模によっては、記帳の必要のない帳簿が出てくることもあるので、挑戦してみれば思いの外簡単ということもあるかもしれません。

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青色申告と白色申告、どちらを選ぶべき?

青色申告制度を利用することは賢い選択でしょうか。結論から言うと、ケースバイケースです。

青色申告制度は、制度利用者の所得の大きさや経営規模等によって受けられるメリットの大きさに違いが出ます。基本的に制度を利用することで損をすることはありませんが、諸々の手続きや「正規の簿記」を記帳する手間に見合った優遇を受けられるかは人それぞれです。
特に、青色申告特別控除の金額は最高で65万円ですが、65万円以上の不動産所得が無い場合は所得額が最高金額となってしまい、また、規定条件を満たしていない場合に10万円のみ控除できるという点は、本制度を利用するかどうかを判断する一つの基準と言えます。

また忘れられがちですが、青色申告に伴って「正規の簿記」で記帳することは、経営状態を把握できるという点で、金銭以外のメリットをもたらしてくれます。投資の記録をしっかりとつけたい方にとって青色申告は一石二鳥のお得な制度なのです。

まとめ

不動産投資をする上で青色申告制度は知っておいて損のない制度であることは間違いありません。しかし、自分の投資スタイルや動機が本制度と適合するかどうかは吟味する必要があります。
まずは、ご自身がどの優遇制度を受けることができるのかをチェックしてみましょう。手間に見合った優遇措置を受けられそうだと判断できたら、利用してみてはいかがでしょうか。

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ABOUTこの記事をかいた人

大平 優

プロパティエージェント㈱アセットプランニング部 次長 親しみやすい性格でお客様とのコミュニケーションを大切にし、その中で浮かび上がってきた課題を冷静に分析。不動産・不動産サービスを通じて正確なロジックと緻密なシミュレーションを武器に、お客様の将来的な課題を解決へと導く。