不動産は大きな買い物です。投資目的で購入するとなれば、相当の自己資金が必要なのではないかというイメージを持っている人もいるでしょう。しかし、条件次第では少額からでも問題なくスタートして収益を得ることも可能です。今回は、少額から不動産投資を始める場合を想定し、どのような計画になるのか見ていきます。
自己資金はどうやって決める?
少ない資金からでも行える不動産投資。まずは、不動産投資を始める際に必要となる自己資金をどのように考えて決定すれば良いのかをご紹介します。
どのような自己資金がかかる?
自己資金には、どのような費用がかかるのでしょうか。自己資金の内訳となるそれぞれの費用についてご紹介します。
頭金
頭金とは、不動産を購入する際に最初に支払うお金のことを指します。不動産は大きな買い物であるため、ほとんどの場合はローンを組んで分割払いで購入することになります。そのうち一回目の支払い額が頭金に当たります。全体の購入費用のうちの頭金の割合は、契約内容によって異なります。頭金の割合が低いほど、ローンの割合が大きくなります。
不動産購入時にかかる費用
不動産を購入する際にかかる費用は物件価格だけではありません。また、ローン契約を行う際にも様々な費用がかかります。どのような費用がかかるのか、詳しく見ていきましょう。
- 契約時にかかる費用
売買契約書や建築請負契約書などの書類に貼る収入印紙代として印紙税がかかります。
- 登記の際にかかる費用
登記の際にかかる税金として登録免許税や、登記手続きを司法書士に依頼する場合の報酬として司法書士報酬がかかります。
- ローン契約時にかかる費用
融資を受ける金融機関への手数料として融資事務手数料やローン保険料、万が一ローンを返済出来なかった場合のための団体信用生命保険の保険料、建物にかける保険料である火災保険料などがかかります。実際にかかる費用の種類はローン商品によって異なります。
- その他の税金
不動産を取得した際に一度だけ支払う不動産取得税や、一月一日時点の所有者に課される固定資産税、都市計画税などの税金がかかります。
- その他の費用
上記の費用の他、不動産会社に支払う不動産仲介手数料や、水道加入金等の負担金、マンション・アパートの場合には管理費等清算金などがかかります。
自己資金とローン年数の関係
不動産投資を始める際には、ほとんどの場合は物件購入時にローンを組むことになります。通常、ローンの支払いには、不動産の運用によって得た収益を充てます。ローン完済後には、収益からローンの支払いを行う必要がなくなり、自己資産となった不動産から不労収入を得る状態になります。したがって、ローンの返済に要する期間が短いほど不労収入を得られる期間が長くなります。
不動産を購入する際の自己資金が多いほど、ローンとして借り入れる金額が小さくて済みます。そのため、自己資金は予算内ではなるべく大きく設定した方がより早く収益を得られるという利点があります。とはいっても、運用によって得た収益のみでローンを返済できる範囲内であれば、自己資金を抑えることが可能です。
自己資金が少ない時の物件選び
では、自己資金を抑えて不動産投資を行う場合にはどのような物件を選べば良いのでしょうか。物件を選ぶ際に重要となるいくつかの条件について見ていきましょう。
中古or新築
新築の物件は、中古の物件に比べて一般的に価格が高いため、自己資金が少ない場合には、より高額なローンを組まなければならなくなります。そのため、ローンを組んで物件を購入したものの、運用がうまくいかなかった場合に返済出来なくなるリスクが高くなっています。
そのため、自己資金が少ない場合には、中古の物件を選ぶほうが現実的であると考えがちですが、問題はそう単純ではありません。中古物件といっても、築年数が経っている物件は修繕費が大きくなってしまうほか、ローン返済期間中に老朽化が進み、リフォームが必要となってしまう場合もあります。何より、中古物件であっても入居者を得られなければ少額のローンさえ大きな負担になりかねません。
したがって、中古か新築かといった区別よりは、入居者を得られそうかどうかという点こそ重要な判断基準になります。ローンの支払いを家賃収入から行えなければ、不動産経営が赤字状態にあることを意味します。このことは裏返せば、家賃収入から支払えている限り、常に経営黒字の状態にあり、資産は増加し続けていることを意味します。ローンの金額の多寡も加味する必要がないわけではありませんが、まずは不動産経営に失敗しない物件を選ぶという意識の方が、より重要と言えます。
アパートorマンション
ローンを組んで不動産投資を行う際には特にリスクを最小限に抑えることが大切です。収入を得ることが出来なくなるリスクとして、借り手が見つからない空室の状態があります。そのため、空室率がなるべく低くなるような物件選びを行う必要があります。
自己資産を抑えながら投資先としてマンションを選んだ場合には、一室を購入して運用する「区分所有」を行うことになるでしょう。一つの部屋しか運用しないため、借り手が見つからなかった場合にはその間は運用収入を得ることができなくなってしまいます。したがって区分所有を選ぶ場合には、都市部など住宅需要の多い地域に絞って投資し、リスク回避をする必要があります。
それに対して、アパート投資では、同時に複数の部屋を貸し出すことになります。そのため、貸し出ているすべての部屋が同時に空室になり、収入がなくなるという状況は比較的起きにくくなります。しかしこの場合でも、住宅需要の見極めが大切なことに変わりはありません。住宅需要に応じて、空室があったとしても返済可能なローン額をあらかじめ見積もっておき、リスクに備えておく必要があります。
立地・賃料
これまで強調してきた通り、空室のリスクを減らすためには、物件の立地を考慮することが大切です。駅の近くや、幹線道路沿い、大型商業施設の近くなどといった、一般的に利便性の高い立地では空室が生じにくい代わりに物件価格が高くなってしまいます。
空室が生じにくいという特徴を重く評価するか、ローンが高額になるという点を重く評価するかは、投資家の判断によります。もちろん理想的なのは、物件価格があまり高額でなく、かつ需要のある物件を選ぶことです。しかし、一般に需要のある地域の物件は高額になり、そうでない地域の物件は低額になります。自分がどちらを重く評価して投資を行ったのか、立地の特徴を理解して投資するようにしましょう。
また、空室を防ぐためにも、賃料を適切に設定する必要があります。多少収益が低くなってしまう可能性はあるものの、相場賃料を上回らないことが重要です。また敷金・礼金を低めに設定するなどといった空室対策を行うのも有効です。
自己資金100万円の場合のシミュレーション
それでは実際に、少ない自己資金で不動産投資を行った場合の収入や利回りは具体的にどれくらいになるのでしょうか。自己資金100万円の場合をシミュレーションしてみましょう。
- シミュレーションの物件情報
物件価格 | 8500万円 |
購入諸経費 | 500万円(仲介手数料、印紙代、登記費用、各種税金など) |
総投資額 | 9,000万円 |
ローンの返済期間 | 30年(金利3%) |
家賃収入 | 月額7万円×8部屋(56万円) |
- シミュレーション結果
満室時の年間予定収入 | 672万円(56万円×12ヶ月) |
年間のローン返済額 | 451万円 |
稼働率が90%の場合(空室なし〜空室1程度で30年間継続) | |
空室控除・諸経費 | 168万円(空室による賃料ロスと維持費等の諸経費の合計額) |
支出合計 | 619万円(ローン返済額+空室控除・諸経費) |
年間手取り収入 | 53万円(年間予定収入−支出合計) |
表面利回り | 7.90%(年間予定賃料収入÷物件価格) |
実質利回り | 0.58%(年間手取り収入÷総投資額) |
自己資金に対する利回り | 53.00%(年間手取り収入÷自己資金) |
稼働率が85%の場合(空室1〜まれに空室2が生じる状態) | |
空室控除・諸経費 | 202万円(空室による賃料ロスと維持費等の諸経費の合計額) |
支出合計 | 653万円(ローン返済額+空室控除・諸経費) |
年間手取り収入 | 19万円(年間予定収入−支出合計) |
表面利回り | 7.90%(年間予定賃料収入÷物件価格) |
実質利回り | 0.21%(年間手取り収入÷総投資額) |
自己資金に対する利回り | 19.00%(年間手取り収入÷自己資金) |
稼働率が80%の場合(空室2〜空室3の状態が継続) | |
空室控除・諸経費 | 236万円(空室による賃料ロスと維持費等の諸経費の合計額) |
支出合計 | 687万円(ローン返済額+空室控除・諸経費) |
年間手取り収入 | -15万円(年間予定収入−支出合計) |
表面利回り | 7.90%(年間予定賃料収入÷物件価格) |
実質利回り | -0.16%(年間手取り収入÷総投資額) |
自己資金に対する利回り | -15.00%(年間手取り収入÷自己資金) |
上記の物件において年間の稼働率を90%、85%、80%とした時のシミュレーションは以上のようになります。このように、少ない自己資金でも、稼働率を高く保つ(空室率を低く保つ)ことができれば、十分に利回りが高い投資となります。特にこの例では空室が3室出る状況が続くと経営が赤字になることがわかります。
区分所有で一室のみを経営する場合には、稼働率はローン返済期間に占める空室期間の割合として考えましょう。あらかじめ空室期間がどの程度まで生じてもよいのかを把握しておくことで、空室が生じたとしても焦らずに対応することができます。
少額で始める不動産投資のメリットとデメリット
最後に、少ない自己資金で不動産投資を行った場合のメリットおよびデメリットについてご紹介します。
メリット
- 不動産投資を始めやすい!
少額で始める不動産投資のメリットとして、第一に始めやすさがあります。「不動産投資」と聞くと仮想通貨などと比べれば敷居が高く感じることがあるかもしれませんが、実際にはあまり多くお金を準備しなくても始めることができるため、手軽に始めることができます。
- レバレッジを利用して投資ができる
レバレッジとは、他人資本を用いて自己資本に対する利益率を高めることを指します。少ない自己資金で始める不動産投資の場合では、金融機関等から融資を受けることによって、自己資金だけでは購入することができない物件も購入することができます。そのため、運用する資産の規模を拡大することができ、収益を大きくできるというメリットがあります。
- 利回りが高い
少ない自己資金から始める不動産投資には、利回りが高いというメリットがあります。そのため、銀行預金よりも高い利率で資産を運用することができます。また、ローンは収益を用いて返済する仕組みになっているため、完済後には、さらに高い利率で資産運用することができます。
- 長期間収入を得ることができる
不動産投資では、長期間に渡って収入を得られるというメリットもあります。物価上昇による不動産の相場の変動に合わせて賃料を調節することができるため、インフレ対策として不動産投資を用いることも可能です。
デメリット
- 借入金額の上限に注意
物件を購入するためにローンを金融機関等から借り入れる際、ほとんどの場合借り入れられる上限額が決まっています。また、審査の結果次第では、購入に必要な分のローンを組めない場合もあります。そのため、あらかじめ借入可能金額を確かめた上で物件を選ぶようにしましょう。
- ローンを返済できない場合には破綻のリスク
金融機関等から借り入れたローンが返済できない場合には、当然ながら破産してしまう可能性があります。レバレッジにより収益性が高まったと同時に、その裏でリスクも高まるのです。そのため、キャッシュフローの観点から無理のない投資プランの設計や、空室対策等のリスクを下げるための工夫は欠かせません。
以上のように、デメリットはあるものの、なるべくリスクを下げるように投資することによって、利率の高い資産運用を行えるようになります。
まとめ
不動産投資は、少ない自己資金から始めることができます。金融機関等からの融資を活用することによって、自己資金だけでは購入することができない不動産も運用することができるという特徴があります。そのため、運用する資産の規模が拡大するため、自己資金に対して高い利回りで資産を運用することができるというメリットがあります。少ない自己資金で始める場合には、ローンを返済しながら資産運用する仕組みになっているため、リスクを避けながら投資するようにしましょう。
参考記事:小額資金で不動産投資
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